OKADA BRICK 岡田煉瓦製造所

Column

コラム

「謹製」という言葉に込めて

受け継がれる、
 ものづくりの姿勢

2026.09.29

水簸粘土

― 砂利を洗うことで生まれる、レンガの原料 ―

レンガは、何からできているのでしょうか。答えはもちろん「粘土」です。ただ、岡田煉瓦で使っている粘土は一種類ではありません。三河粘土、山土、そして「水簸粘土(すいひねんど)」。今回は、この中でも少し聞き慣れない「水簸粘土」についてご紹介します。普段レンガを見ていても、その原料がどこから来て、どのようにつくられているのかを見る機会は、ほとんどありません。そこで今回、水簸粘土ができる過程を、実際に砂利を採取されている業者様に見せていただきました。

水簸粘土は、砂利を洗うところから生まれる

水簸粘土が生まれるきっかけは、意外にも「砂利」です。山から採取した土砂から砂利などを取り出す際には、水を使って洗浄します。砂利を洗えば、その水には細かな土や粘土分が混ざります。つまり、水簸粘土は最初から粘土を採ることを目的に掘り出したものではなく、砂利を採取・洗浄する工程の中で生まれる粘土分です。

大きな池で、粘土を沈殿させる

砂利を洗った泥水は、大きな沈殿池へ送られます。

ここで水の中に含まれている細かな粘土分を沈殿させます。底に溜まった粘土分を吸い上げ、別の槽へ移し、また沈殿させる。こうして水と粘土を少しずつ分けていきます。水の中で粒子を沈降させ、分離していく方法を「水簸(すいひ)」といいます。「水簸粘土」という少し難しそうな名前も、仕組みを知ると分かりやすいものです。

水簸という方法によって、水と分けられた粘土。

それが「水簸粘土」です。

水を抜くと、「粘土」が現れる

沈殿させただけでは、まだ多くの水分が含まれています。そこで、さらに粘土と水を分離していきます。

そして水分を取り除いていくと、最後に残るのがこちらです。

ここまで来ると、私たちが普段レンガづくりで扱っている「粘土」そのものに見えます。砂利を洗った泥水から始まり、沈殿と分離を繰り返すことで、レンガの原料として使える粘土が取り出されているのです。

「副産物」だけれど、立派な粘土

ここが、水簸粘土の面白いところです。もともとの目的は、粘土を採ることではありません。砂利を採取する工程の中で生まれる副産物です。そのため、利用されなければ処分されることもあります。しかし、「副産物だから、粘土として劣っている」というわけではありません。今回参考にした資料でも、山砂利を洗浄した際に出る泥水から粘土を回収し、それを「水簸粘土」と呼んで窯業原料として利用してきたことが紹介されています。 瓦の話(3)愛知県三州瓦と原料粘土岡田煉瓦でも、水簸粘土をレンガの原料の一部として配合しています。

レンガは、一つの粘土だけでつくるものではない

岡田煉瓦では、主に三河粘土・山土・水簸粘土を組み合わせてレンガをつくっています。それぞれ性質の異なる土を配合し、成形し、乾燥させ、最後に高温で焼成することで、一つのレンガになります。昔から同じ粘土だけを使い続けてきたわけでもありません。参考資料を見ると、三河地方の窯業では都市化などによって三河粘土の採掘量が減少する中、山土や水簸粘土など、使用する原料が多様化してきたことが分かります。つまり、水簸粘土の利用は、単に「余ったものを使う」というだけではなく、地域の窯業が原料の変化に対応してきた歴史の一つでもあります。

捨てれば「産業廃棄物」。使えば「原料」。

今回、水簸粘土ができる現場を実際に見て、改めて面白いと感じました。砂利を採る。砂利を洗う。泥水の中から粘土を沈殿させる。水と粘土を分ける。そして、その粘土が私たちの工場へ運ばれ、別の粘土と混ざり、レンガになる。もともとは、砂利を採取・洗浄する工程で生まれる副産物です。利用されずに処分されれば、「産業廃棄物」となります。しかし、粘土として十分に利用できるものを、レンガの原料として購入し、活用する。そうすることで、処分されるものではなく、価値のある「原料=有価物」になります。

捨てれば「産業廃棄物」。
使えば「原料」。

同じ水簸粘土でも、その後に使われるか、処分されるかで意味が大きく変わります。レンガづくりというと、どうしても成形や焼成に目が向きます。しかし、そのもっと手前にある「原料」に目を向けると、こうした資源の循環も見えてきます。どんな土を使うのか。その土は、どこから来たのか。そして、本来処分される可能性のあったものを、どう次の製品につなげていくのか。

水簸粘土をレンガに使うことも、限りある土を無駄にしない一つの方法です。

岡田煉瓦ではこれからも、レンガそのものだけではなく、そのレンガをつくっている「土」のことも、レンガの語り部としてご紹介していきたいと思います。

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