OKADA BRICK 岡田煉瓦製造所

Column

コラム

「謹製」という言葉に込めて

受け継がれる、
 ものづくりの姿勢

2026.10.10

顔の見える煉瓦屋でありたい。

岡田煉瓦製造所では、「顔の見える煉瓦屋」を目指しています。弊社は1897年創業。現在も操業を続ける国内で最も古いレンガメーカーとなりました。かつて数多く存在したレンガメーカーも、今では数えるほどしか残っていません。私は2012年、婿養子として岡田家に入り、岡田煉瓦の経営に携わるようになりました。長い歴史を持つ会社に入ったことで、自然と「つなぐ」という意識が生まれたのだと思います。岡田煉瓦には、創業100周年を迎えた1997年に編纂された『岡田煉瓦100年史』があります。入社後、この100年史を通じて会社の歩みを知り、歴史を残すこと、そして伝えることの大切さに気づきました。先人たちが積み重ねてきた歴史を、次の世代へつないでいく。そのためには、私自身が岡田煉瓦の歴史を伝える「語り部」にならなければならない。そんな意識も生まれました。

「顔の見える煉瓦屋」の原点

さて、なぜ「顔の見える煉瓦屋」を目指すようになったのでしょうか。スーパーで見かける「佐藤さんちの大根」のように、生産者の顔が見える商品には安心感があります。そうした考え方にも、以前から共感していました。しかし、私にとって「顔を見せる」ということには、もう少し違った意味があります。その原点は、2018年にさかのぼります。当時、私は「愛知中小企業家同友会」という中小企業経営者の学びの場に所属しており、入会2年目の新米会員でした。あるプロジェクトのリーダーを任され、自社の経営課題についてプレゼンテーションをする機会がありました。テーマは「商品の魅力の追求」。その日は少し風邪気味で、私はマスクをしたまま話をしようとしていました。すると、先輩経営者からこんなことを言われました。

「マスクを取りなさい。表情を見せて話さなければ、伝わらないことがある。」

さらに、私に理解させるため、極端な例として「営業マンがマスクをして来たら、嘘を言っているのか本当のことを言っているのか、表情から判断できない。だから私は、その営業マンを信用しない」という趣旨のことも言われました。もちろん、マスクをしているから信用できないという話ではありません。その先輩が伝えたかったのは、経営者として人と向き合う「姿勢」の話だったのだと、今では思っています。

顔を出すという覚悟

その先輩経営者は、自分の会社の前に、自分の顔が大きく描かれた看板を立てていました。私は、その看板を見て考えさせられました。誰でも、自分の顔を表に出すことには多少のためらいがあると思います。顔を出せば、良いことばかりではありません。思わぬ注目を浴びることもあれば、批判や誹謗中傷の対象になることもあるでしょう。それでも、自分の顔を掲げて商売をする。そこには、経営者としての「覚悟」があるように感じました。人間ですから、誰にでも良い面もあれば、悪い面もあります。顔を出したからといって、立派な経営者になれるわけでもありません。経営者として何が正解なのか、簡単に答えが出るものでもありません。しかし、

自分の顔を見せ、自分の言葉で語り、自分の仕事に責任を持つ。

その姿勢を示すことには意味があると思いました。

顔を見せられる社長になりたい

それから私は、名刺に自分の顔写真を載せました。ホームページにも顔を載せるようになりました。小さなことかもしれませんが、私にとっては一つの決意でした。目指したのは、単に「顔を出している社長」ではありません。

「顔を見せられる社長」になること。

似ているようですが、私の中では少し違います。顔を出すことは、写真を載せればできます。しかし、顔を見せられる社長であり続けるためには、日々の仕事や人との向き合い方が問われます。お客様に対しても、従業員に対しても、地域の方々に対しても。自分の仕事に胸を張れる存在でありたいと思っています。

岡田煉瓦製造所 代表取締役 岡田信一

そして、のぼり旗になりました。

現在、岡田煉瓦では毎週土曜日の午前中に、レンガのアウトレット販売を行っています。もともとは、地域の方々に岡田煉瓦を知っていただき、地域との接点をつくりたいという思いから始めた取り組みです。そのアウトレット販売ののぼり旗には、私の顔が大きく描かれています。実は、このデザインを考えてくれたのは私ではありません。弊社のカタログなどをお願いしている、碧南市の「一心舎」の筒井さんです。一心舎さんには日頃からお世話になっており、弊社の理念や目指している会社の姿を、最もよく理解していただいている方の一人だと感じています。そんな筒井さんがデザインしてくれたのが、私の笑顔が大きく描かれたのぼり旗でした。

「OKADA BRICK」

「SPECIAL OUTLET!」

そこには、笑っている私の顔があります。私が「顔の見える煉瓦屋」を目指していることを理解し、その想いをデザインという形にしてくれたのだと思います。

一心舎・筒井さんがデザインしたアウトレット販売ののぼり旗

2018年に先輩経営者から教わった「顔を見せる」という姿勢。それが、名刺やホームページへとつながり、今ではこんなのぼり旗になりました。自分たちの想いを理解し、形にしてくれる人がいる。それもまた、顔の見える関係だからこそ生まれたものなのかもしれません。

地域の皆さんにも、顔を見せる

アウトレット販売では、地域のフリーペーパーにも広告を掲載しています。その広告にも、私の顔がイラストとして登場しています。レンガのセールをお知らせする広告ですが、そこにも「顔の見える煉瓦屋」という私たちの姿勢が表れているように感じます。地域の方にとって、レンガ工場は普段あまり縁のない場所かもしれません。しかし、広告に見覚えのある顔があれば、少しは親しみを感じていただけるのではないでしょうか。

「レンガを買うなら、あの顔の会社に行ってみよう」

そんなふうに思っていただけたら、うれしいことです。

地域のフリーペーパーに掲載した過去のアウトレット販売広告。こちらにも社長のイラストが登場しています。

顔の見える煉瓦屋でありたい。

レンガは、建物や街の中で何十年、時には百年以上も使われる材料です。私たちが製造したレンガも、いつかは誰が作ったものなのか分からなくなるかもしれません。それでも、今この時代にレンガを作っている私たちには、伝えられることがあります。なぜ、この色になるのか。なぜ、この形なのか。どんな思いで作っているのか。そして、誰が作っているのか。大きな会社ではありませんが、小さなメーカーだからこそ、お客様と直接話し、一緒に考えられることもあると思います。1897年から続く岡田煉瓦の歴史を「つなぐ」こと。その歴史や技術を「語り継ぐ」こと。そして、自分たちの顔を見せながら、責任を持ってレンガを作り続けること。

これからも、岡田煉瓦は「顔の見える煉瓦屋」でありたいと思います。

ちなみに、こんなことを言っていますが……

実は、私、人見知りです。

レンガのことを聞かれれば、いくらでも話せるのですが、プライベートでは何を話していいのか分からなくなることがあります。相手との距離感や、どこまで踏み込んでいいのかが分からないんですよね。(笑)

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