2026.10.16
普通レンガと耐火レンガ、何が違う?
― 景観をつくるレンガと、火に耐えるレンガ ―
「普通レンガと耐火レンガは、何が違うのですか?」
ときどき、お客様からいただく質問です。どちらも粘土などを原料とした焼き物で、見た目もよく似ています。しかし、私たちレンガメーカーからすると、この二つは、そもそもつくられる目的が違うものです。普通レンガは、建物や外構、歩道などに使われることから、「景観レンガ」と呼ばれることもあります。一方、耐火レンガは、その名前のとおり、高温に耐えることを目的としたレンガです。今回は、普通レンガと耐火レンガの違いについて、製造メーカーの立場から考えてみたいと思います。
普通レンガは、景観をつくるためのもの
私たち岡田煉瓦が製造している普通レンガは、建物の外壁や塀、歩道、公園など、さまざまな場所で使われています。もちろん、強度や耐久性といった性能も大切です。しかし、それだけではありません。レンガは、人の目に触れ、街の景観をつくる建材です。赤、ベージュ、黒などの色合い。表面のザラザラとした質感。焼き物ならではの色むらや、一つひとつの表情。私たちは、そうした部分にもこだわってレンガを製造しています。美しい建物や外構、歩道をつくるためのもの。それが、私たちの考える普通レンガ、つまり景観レンガです。
見た目だけでは、違いが分からないことも
普通レンガというと赤色、耐火レンガというと白色や黄色をイメージされる方もいるかもしれません。しかし、レンガの種類は色だけで決まるものではありません。実際に弊社で製造している景観レンガの中にも、耐火レンガとよく似た色や質感の製品があります。

耐火レンガによく似た色合いですが、弊社が製造している景観レンガです。この写真のレンガは、耐火レンガではありません。見た目は耐火レンガによく似ていますが、高温の設備で使用することを目的として製造したものではありません。つまり、見た目が似ていても、求められる性能が同じとは限らないのです。
耐火レンガは、火に耐えるためのもの
では、耐火レンガは何が違うのでしょうか。耐火レンガは、工業炉や焼成窯など、高温になる設備で使用するためにつくられています。私たちがレンガを焼いているトンネル窯にも、耐火レンガが使われています。普通レンガが景観を重視するのに対して、耐火レンガは高温での性能が重視されます。例えば、高温になっても軟化しにくいこと。熱によって大きく変形しないこと。加熱と冷却を繰り返しても、壊れにくいこと。ただし、これらの性能は耐火レンガの種類によって異なります。耐火レンガにもさまざまな種類があり、使用する温度や場所に合わせて選ぶ必要があります。つまり、普通レンガと耐火レンガは、どちらが優れているということではなく、求められている役割が違うのです。
普通レンガは、ピザ窯やBBQ窯に使えない?
「普通レンガでピザ窯をつくりたいのですが、使えますか?」
このようなお問い合わせをいただくことがあります。結論からお話しすると、普通レンガもピザ窯に使用できます。ただし、使用する場所が重要です。例えば、ピザ窯では内側に耐火レンガ、外側に普通レンガ(景観レンガ)を使用する構造があります。なぜ、わざわざ二種類のレンガを使うのでしょうか。それは、それぞれのレンガに求められる性能が違うからです。窯の内側は、火や高温の熱に直接さらされます。そのため、高温でも軟化しにくく、加熱と冷却の繰り返しに耐えられることが重要です。一方、窯の外側は、雨や風、日光など、屋外の環境にさらされます。そのため、耐候性や耐久性、そして見た目の美しさが重要になります。つまり、内側は火に対する強さ、外側は屋外環境に対する強さが求められるのです。もちろん、外側のレンガにも熱は伝わります。窯の構造によっては断熱層を設けることもありますが、すべてのピザ窯に必要というわけではありません。大切なのは、実際にレンガがどの程度の温度になるのかを考えることです。

内側に耐火レンガ、外側に景観レンガを使用したピザ窯の構造例。
BBQ窯についても同じです。例えば、金属製の炭受けを設け、その周囲をレンガで囲うような構造であれば、景観レンガを使用できる場合があります。ただし、炭が直接触れていなくても、強い熱が伝わる部分には注意が必要です。

金属製の炭受けを設け、周囲に景観レンガを使用したBBQ窯の構造例。
1120℃で焼いたレンガでも、火に強いとは限らない?
岡田煉瓦では、赤レンガを約1120℃、焼過レンガを約1170℃で焼成しています。これだけの高温で焼いているのだから、ピザ窯の内側にも使えるのではないか。そう考える方もいらっしゃると思います。しかし、ここには大きな違いがあります。
レンガを製造するときの焼成温度と、完成したレンガを繰り返し使用できる温度は、同じではありません。
レンガは、製造時に原料や製品に合わせて温度を管理しながら焼成します。一方、ピザ窯やパン窯では、火を入れるたびに温度が上がり、使用後には冷えていきます。この加熱と冷却が繰り返されることが、レンガにとって負担になる場合があります。
約573℃で起こる、石英の変化
レンガの原料には、石英という鉱物が含まれていることがあります。石英には、約573℃で結晶構造が変化する性質があります。この変化は「石英の結晶転移」と呼ばれ、加熱時には体積が増加し、冷却時には元の構造に戻ります。水が氷になると体積が増加する現象とは仕組みが違いますが、温度によって材料の内部に変化が起こるという点では、イメージしやすいかもしれません。もちろん、レンガ全体が573℃で一斉に大きく膨張するわけではありません。しかし、レンガ内部の石英が結晶転移を起こすことで、周囲との膨張差が生じ、内部に負担がかかる場合があります。また、窯の内部では、火に近い部分と外側とで温度差が生じます。この温度差による膨張や収縮も、ひび割れなどの原因になります。こうした変化が繰り返されることで、レンガが傷んだり、目地に負担がかかったりする可能性があります。なお、石英の結晶転移は耐火レンガでも起こり得ます。耐火レンガだから膨張や収縮がまったくない、というわけではありません。耐火レンガは、原料や組織、使用条件に応じて、高温環境で必要な性能が得られるようにつくられているのです。
では、耐火レンガを庭に使えない?
反対に、耐火レンガを庭や外構に使用することはできないのでしょうか。実際には、耐火レンガを庭や舗装に使用している例もあります。私たちも、お客様から耐火レンガについてお問い合わせをいただくことがあります。ただし、ここで知っていただきたいのが、普通レンガとの目的の違いです。以前、耐火レンガをご注文いただいたお客様から、こんなお話がありました。
「前回は白かったのに、今回は黄色だった」
普通レンガを製造している私たちからすると、色の違いは大切な問題です。同じ製品を注文したのに、前回と大きく色が違えば、お客様が困るのも当然だと思います。しかし、耐火レンガは、基本的に耐火性などの機能を重視してつくられています。そのため、景観用の普通レンガほど色調の均一性が重視されていない製品もあります。もちろん、すべての耐火レンガで色が保証されないという意味ではありません。製品ごとの仕様によります。ただ、耐火性能を満たしていても、前回と同じ色になるとは限らないことがあります。
景観レンガでは大切な「色」が、耐火レンガでは必ずしも最優先ではない。
これも、二つのレンガの目的の違いだと思います。
耐火レンガは、水に弱い?
「耐火レンガは水に弱い」
そんな話を聞くことがあります。では、なぜそのように言われるのでしょうか。ここでは、レンガが焼成によって固まる仕組みについて、少し考えてみたいと思います。普通レンガは、粘土を高温で焼成することで、原料の粒子同士が結びつき、強度が生まれます。焼成が進むと、原料の一部に液相が生じ、冷却後にはガラス質となって残ることがあります。こうした焼結やガラス相の形成によって、レンガの組織が緻密になり、吸水率が低くなる場合があります。一方、耐火レンガも焼成によって粒子同士が結びつきますが、高温でも軟化しにくいことが重要です。ガラス質は常温での結合に役立つ一方、組成によっては高温で軟化する原因にもなります。そのため、耐火レンガでは、耐火性の高い結晶やガラス相の組成、量などを考慮して原料が設計されています。ただし、耐火レンガの粒子同士の結びつきが弱いというわけではありません。耐火レンガには、非常に緻密で強度の高いものもあれば、断熱性を重視して気孔を多く含むものもあります。吸水率や耐水性も、製品によって大きく異なります。つまり、耐火レンガだから必ず水に弱い、ということではありません。ただし、耐火性能が保証されていることと、屋外での耐久性が確認されていることは別の話です。庭や舗装に使用する場合には、吸水率や凍害、摩耗など、その環境に必要な性能を確認することが大切だと思います。
昔、岡田煉瓦でも耐火レンガをつくっていました
実は、岡田煉瓦でも昔、耐火レンガを製造していた時期がありました。そのレンガには、「OTR」や「SK30」という刻印が入っていました。SKは、耐火度を示すゼーゲルコーンの等級を表すものです。当時は、高温に耐えるための工業製品として製造していたレンガです。しかし、今では、その刻印自体を面白いと感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。レンガの表面に残る文字。昔の製造所を思わせる刻印。少し不揃いな色合いや、使い込まれたような質感。もともとは機能を目的としてつくられた耐火レンガが、時代を経て、景観材料としての魅力を持つこともあります。これは、レンガという材料の面白いところだと思います。

どちらが優れているのではなく、目的が違う
普通レンガと耐火レンガ。見た目はよく似ていますが、つくられる目的は大きく異なります。普通レンガは、建物や街並みを美しくし、長く使うためのもの。耐火レンガは、高温の環境で必要な性能を発揮するためのもの。普通レンガにも耐熱性はありますし、耐火レンガにも景観材料としての魅力があります。しかし、一つの性能が優れているからといって、すべての用途に適しているとは限りません。私たちは、景観レンガを製造するメーカーとして、色や質感、強度、耐久性などを大切にしています。そして、ピザ窯やパン窯のような高温環境では、耐火レンガをおすすめしています。
大切なのは、どちらが優れているかではなく、それぞれのレンガが何のためにつくられたものなのかを理解すること。
同じレンガでも、目的が変われば、求められる性能も変わります。それぞれの特徴を理解して、適した場所に使っていただければと思います。





