OKADA BRICK 岡田煉瓦製造所

Column

コラム

「謹製」という言葉に込めて

受け継がれる、
 ものづくりの姿勢

2026.10.27

もう一つのロゴに込めた想い。

― 明治の刻印文化を、現代へ。―

岡田煉瓦には、二つのロゴがあります。一つは、会社の歴史やものづくりへの思いを込めた「メインロゴ」。そしてもう一つが、今回ご紹介する「セカンダリーロゴ」です。以前のコラム「岡田煉瓦のロゴに込めた想い。」では、6代目になってから新しくしたメインロゴについてご紹介しました。メインロゴには、レンガメーカーであること、1897年創業の歴史、そして「謹製」の心を込めています。一見するとレンガを積み重ねた形ですが、私たちが得意としてきた「敷きレンガ」も表現したロゴです。その特徴を残しながら、もっとシンプルにしたもの。それが、セカンダリーロゴです。

▲ 左:メインロゴ/右:セカンダリーロゴ。基本となる図柄は共通していますが、用途に合わせてデザインを使い分けています。

シンプルにしても、思いは変わらない

セカンダリーロゴは、3つのレンガを表した図柄と「OKADA BRICK」の文字だけで構成されています。メインロゴにある「謹製」や「SINCE 1897」の文字はありません。レンガの表面に描かれた細かな線も省きました。なぜ、もう一つのロゴが必要だったのでしょうか。その理由の一つは、小さなサイズでも使えるようにするためです。例えば、制服や帽子への刺繍。メインロゴは細かな部分が多いため、小さくすると再現が難しくなります。そこで、ロゴの特徴を残しながら、できる限りシンプルにしました。

▲ メインロゴを刺繍した制服。細かな表現には、ある程度の大きさが必要です。

▲ セカンダリーロゴの使用イメージ。小さな刺繍でも分かりやすいデザインを目指しました。

文字や線を減らしても、そこに込めた思いは変わりません。レンガメーカーであること。地道にものづくりを続けてきたこと。そして、街の豊かさを足元から支えること。

形をシンプルにしても、思いまで小さくなるわけではありません。

もう一つの目的は、「刻印」

実は、セカンダリーロゴをつくった理由は、刺繍や印刷だけではありません。もう一つ、大切な目的があります。それは、レンガに刻印を残すことです。明治時代のレンガには、製造者などを示す小さな印が押されているものがあります。岡田煉瓦にも、昔の刻印が残されたレンガがあります。

▲ 岡田煉瓦に残る古い刻印レンガの一つ。

写真のレンガには、日の丸を思わせるマークと、「イロハニホヘト」の「ニ」の文字が刻まれています。当時は、製造した職人や班を区別するために、こうした印が使われることもあったと伝えられています。すべてのレンガに刻印があったわけではありませんが、今でも古い建物やレンガから、さまざまな印を見つけることができます。小さな印ですが、そこには当時のものづくりの姿が残されています。誰が、どこで、どのようにつくったのか。刻印だけで、そのすべてが分かるわけではありません。それでも、100年以上前のレンガに残された印を見ると、当時のつくり手の存在を感じます。

レンガは、つくった人がいなくなっても、その仕事を残すことができる素材です。

明治の刻印文化を、現代へ

現在、私たちが製造する一般的なレンガには、製造者を示す刻印を押していません。しかし、歴史的な建造物の補修や復元に関わる中で、昔のレンガに残された刻印を目にする機会があります。そのたびに、考えることがありました。

現代の岡田煉瓦にも、刻印を残せないだろうか。

ただし、メインロゴをそのまま刻印するのは難しいことです。文字や線が細かく、小さな刻印では再現しきれません。また、歴史的な建物の補修に使われるレンガであれば、現代的な大きなロゴが目立ちすぎるのも違うと思います。昔のレンガに刻まれていた印は、決して大きなものではありませんでした。レンガの片隅に、控えめに残された小さな印。私たちも、そんな刻印をつくりたいと思いました。そこで考えたのが、セカンダリーロゴの活用です。レンガを表すシンプルな図柄と、「OKADA BRICK」の文字。これなら、昔の刻印のように、小さく残すことができるかもしれません。新しいデザインでありながら、昔のレンガと並んでも違和感の少ないもの。そんな刻印を目指して、製作を進めました。

2026年10月27日。新しい刻印ができました。

そして今日。2026年10月27日。セカンダリーロゴの刻印が完成し、実際のレンガに押してみました。

▲ 新しく製作した刻印を、焼成前のレンガに押した試作品。右下に小さな「OKADA BRICK」の印が残されています。

レンガ全体から見ると、本当に小さな印です。近づかなければ、気づかないかもしれません。でも、それでいいと思っています。刻印が主役になる必要はありません。主役は、そのレンガが使われる建物や街並みだからです。

▲ 刻印部分の拡大写真。小さなサイズでも、レンガの図柄と「OKADA BRICK」の文字を表現することができました。

実際に押してみると、小さな文字や線も、想像していた以上にはっきりと表現できました。もちろん、まだ焼成前の状態です。これから乾燥・焼成を経て、刻印がどのように残るのかを確認する必要があります。それでも、思い描いていたものが実際のレンガに刻まれたことは、私たちにとって大きな一歩です。明治時代のレンガに残されていた、小さな印。100年以上の時を経て、私たちも新しい印をつくりました。

「顔が見える」とは、責任を持つこと

私たちには、一つの願いがあります。

「日本全国に響き渡る“物語”をつむぐ煉瓦メーカーへ」。

岡田煉瓦は、小さなレンガメーカーです。全国のすべての現場に関われるわけではありません。それでも、私たちが携わった現場には、できることなら、その証を残したいと思っています。それは、会社の名前を宣伝したいからではありません。設計する人、施工する人、そして私たち製造する人。多くの人が関わり、一つの建物や街並みがつくられます。その中で、私たちも一人のつくり手として、責任を持って関わっていきたい。そんな思いがあります。レンガに刻印を押すということは、そこに製造者の存在を残すことでもあります。何十年、何百年という時間が経ったとき、そのレンガを手にした人が、岡田煉瓦という会社を知るかもしれません。そして、そのレンガの出来栄えも、同時に見られることになります。考えてみれば、少し怖いことでもあります。

名前を残すということは、責任を残すことでもあるからです。

「顔が見えるものづくり」という言葉があります。私たちは、顔が見えるということは、単に誰がつくったのか分かることではないと思っています。

「顔が見える」とは、「責任を持つ」ということ。

そんな思いを、今回の刻印にも込めています。

私たちにとっての「責任印」

メインロゴには、「謹製」という二文字を入れました。「謹製」とは、心を込めて、謹んでつくること。お客様への敬意であると同時に、私たち自身への戒めでもあります。今回のセカンダリーロゴの刻印にも、同じ思いがあります。私たちにとって、この刻印は単なるブランドマークではありません。

ものづくりへの責任を示す「責任印」です。

もちろん、刻印を押したからといって、よいレンガができるわけではありません。むしろ、その印に恥じないものをつくらなければならないという、プレッシャーが生まれます。でも、そのプレッシャーこそ、ものづくりを続けるうえで必要なものなのかもしれません。自分たちがつくったものに、名前を残す。その責任を引き受ける。そんな姿勢を、これからの岡田煉瓦でも大切にしていきたいと思います。

小さな刻印に、大きな願い

1897年に創業した岡田煉瓦は、2027年に130周年を迎えます。これまで、たくさんのレンガをつくってきました。そのほとんどには、私たちの名前は残されていません。それでも、全国のさまざまな場所で、岡田煉瓦のレンガが使われています。これからも、すべてのレンガに刻印を押すわけではありません。まずは歴史的な建物の補修や復元など、刻印を残すことに意味のある仕事から取り組んでいきたいと考えています。いつか、私たちがつくった刻印入りのレンガが、どこかの建物に使われる。そして、何十年、何百年か先に、誰かがその小さな印を見つける。そのとき、岡田煉瓦という名前を知ってもらえるかもしれません。あるいは、ただ昔の職人が残した印として、眺められるだけかもしれません。それでも構いません。私たちがつくったレンガが、その場所の歴史の一部になっているのであれば、それだけで嬉しいことです。

古い文化を、ただ懐かしむのではなく、今のものづくりにつなげていく。

そして、次の世代へ残していく。小さな刻印ですが、そこには大きな願いがあります。

名前を残すということは、責任を残すこと。

もう一つのロゴには、そんな思いを込めています。

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