2026.08.08
レンガのシェア全国1位は、実は愛知県
― 私たちが今もレンガをつくれる理由 ―

愛知県と聞いて、多くの方が最初に思い浮かべるのは、自動車産業ではないでしょうか。しかし、愛知県にはもう一つ、昔から続く大きな産業があります。それが、窯業です。三州瓦、常滑焼、瀬戸物、植木鉢。そして、レンガ。愛知県では昔から、土を原料にしたさまざまな焼き物がつくられてきました。実は、愛知県は「普通れんが」の出荷で全国1位です。2024年の統計では、愛知県の普通れんがは、出荷金額で全国シェア58.3%を占めています。
出荷数量でも全国の53.0%を占めており、金額・数量ともに全国1位です。日本で出荷される普通れんがの半分以上が、愛知県から出荷されていることになります。では、なぜ愛知県でこれほどレンガづくりが続いているのでしょうか。
愛知県は、昔から「焼き物の産地」
愛知県は、全国でも有数の窯業地域です。西三河には三州瓦があり、知多には常滑焼があります。尾張には瀬戸焼があり、植木鉢などの焼き物も長くつくられてきました。地域によって製品は違いますが、共通しているのは、
土を選び、形をつくり、火で焼く。
というものづくりです。その背景には、焼き物に適した良質な粘土に恵まれてきたことがあります。三河地域でも、三河粘土をはじめ、さまざまな原料を組み合わせながら窯業製品がつくられています。レンガも、そうした愛知県の焼き物文化の中で育ってきた製品の一つです。
産地の強さは、粘土だけではない
しかし、焼き物の産地が成り立つ理由は、良い粘土が採れることだけではありません。長い年月をかけて窯業が発展してきた地域には、その周辺にも多くの仕事が育っています。
粘土を採掘する会社。
原料を調合する会社。
窯や機械をつくる会社。
設備を修理する会社。
燃料や資材を供給する会社。
そして、製品を運ぶ運送会社。
レンガを一つつくるためにも、実際には多くの会社や人が関わっています。工場の機械が故障したとき、相談できる設備屋さんが近くにいる。原料について困ったとき、粘土を知っている人に相談できる。製造条件に合わせて、必要な原料を調達することができる。こうした窯業を支える産業基盤が地域にそろっていることが、「産地」の大きな強みです。レンガ工場があるから産地なのではありません。原料、人、技術、設備、物流が地域に集まり、互いに支え合っているからこそ、産地としてものづくりを続けることができます。
日本の中央にあるという強み
愛知県には、もう一つ大きな特徴があります。それは、日本のほぼ中央に位置していることです。レンガは、重量のある建材です。そのため、商品価格だけでなく、運賃も重要になります。愛知県は、関東にも関西にも比較的近く、東西どちらにも製品を届けやすい場所にあります。
原料に恵まれている。
窯業を支える企業が集まっている。
そして、関東にも関西にも運びやすい。
こうして考えてみると、愛知県でレンガ産業が続いてきたことは、偶然ではないのかもしれません。
私たちが強いのではなく、支えられている
岡田煉瓦製造所は、1897年から愛知県安城市でレンガをつくっています。長く続いている会社というと、
「特別な技術があるから」
「会社が強いから」
と思われることがあります。もちろん、私たち自身も、製造技術を守りながら改善を続けてきました。しかし、私たちだけの力でレンガづくりを続けてきたわけではありません。
粘土を掘る人がいる。
原料をつくる人がいる。
機械を直してくれる人がいる。
資材を届けてくれる人がいる。
製品を運んでくれる人がいる。
そして何より、この地域に長い年月をかけて育ってきた「焼き物をつくる文化」があります。私たちが今もレンガを製造できているのは、岡田煉瓦が強いからというより、愛知県という窯業産地に支えられているから。私は、そう考えています。
全国1位という数字の、その先に
「愛知県は、普通れんがのシェア全国1位」数字だけを見ると、少し誇らしい話に聞こえます。もちろん、愛知県でレンガをつくっている会社として、うれしい数字です。しかし、その数字を見て私が感じるのは、会社の強さというより、産地の強さです。
三州瓦、常滑焼、瀬戸物、植木鉢、そしてレンガ。
製品は違っても、その根っこには、土と火を扱ってきた人たちの技術があります。私たち岡田煉瓦も、その大きな窯業文化の中にいる一社です。これからも、地域の原料、技術、設備、そして人に支えていただきながら、愛知県でレンガをつくり続けていきたいと思います。そして、この土地でつくったレンガを、関東へ、関西へ、そして全国の街へ。これからも届けていきます。





