OKADA BRICK 岡田煉瓦製造所

Column

コラム

「謹製」という言葉に込めて

受け継がれる、
 ものづくりの姿勢

2026.08.24

吸水率8.5%と6.5%。レンガに水をかけると違いが見える

レンガの性能を表す数字のひとつに、「吸水率」があります。岡田煉瓦の赤レンガは約8.5%、焼過(やきすぎ)は約6.5%。その差は、重量比でわずか約2%です。数字だけを見ると、

「たった2%で、そんなに違うの?」

と思われるかもしれません。ところが、実際にレンガへ水をかけてみると、その違いが目に見えて分かります。今回はこの実験を通して、レンガの吸水率だけでなく、**「レンガを焼くと内部で何が起きているのか」**まで少し掘り下げてみたいと思います。

赤と焼過。実は同じ原料です

今回比較するのは、岡田煉瓦の「赤」と「焼過」です。この2つは、違う原料からつくられているわけではありません。同じ原料を使い、焼き方を変えることで色や性質を変えています。赤は、約1120℃で酸化焼成。焼過は、約1170℃で還元焼成。焼成温度には約50℃の違いがあります。たった50℃と思われるかもしれませんが、1000℃を超える高温で焼かれるレンガにとって、この違いが焼き締まり方に影響します。

レンガは焼くことで、内部の粒子が結びついていく

レンガは、粘土を成形して乾燥させ、それを高温で焼いてつくります。焼成温度が1000℃を超えるあたりからガラス化が進み、粘土を構成している粒子同士が次第に結びついていきます。このとき、レンガ全体も収縮します。なぜ小さくなるのでしょうか。ミクロの世界で考えると、粒子と粒子の間にあった隙間が狭くなり、より密な状態になっていくとイメージすると分かりやすいと思います。岡田煉瓦の資料でも、焼成温度を上げるほど粒子同士が溶着し、隙間が少なくなって収縮が進むこと、そして、この焼き締まり具合が強度や吸水率と密接に関係すると説明しています。これが、私たちがいう「焼き締まる」という状態です。

50℃高い「焼過」は、より焼き締まる

赤が約1120℃なのに対して、焼過は約1170℃。より高温で焼かれる焼過は、赤よりも焼き締まった状態になります。焼き締まることで、

粒子間の隙間が少なくなる

水が入り込みにくくなる

吸水率が低くなる

という違いが生まれます。そして、より焼き締まった焼過は、強度も高くなります。つまり、色が違うだけに見える赤と焼過ですが、実はレンガ内部の状態にも違いがあるのです。

吸水率8.5%と6.5%。水をかけてみました

では、その違いを実際に見てみます。今回比較した吸水率は、

赤:約8.5%
焼過:約6.5%

です。重量比で考えれば、その差は約2%。ところが、同じように水をかけてみると――。

赤の方が、水を早く吸い込んでいくことが分かります。一方、より高温で焼き締められた焼過は、水の吸い込み方がゆっくりです。たかが2%。されど2%。数字だけを見ていても分かりにくい吸水率の違いが、水をかけてみることで目に見える現象として現れます。

では、「焼過」の方が良いレンガなのか?

ここまで読むと、「それなら、強度が高くて吸水率の低い焼過を選んだ方がいいのでは?」と思われるかもしれません。しかし、私たちは単純にそうは考えていません。通常の使用に必要な強度を満たしているのであれば、必ずしも「強度が高ければ高いほど良い」というものではありません。岡田煉瓦の製品は、必要な強度基準を確認したうえで製造しています。そのため、一般的な用途であれば、赤と焼過のどちらが優れているかというより、まずは好きな色や表情で選んでいただいてよいと考えています。赤には赤の表情があり、焼過には焼過の表情があります。レンガは焼き物です。性能だけでなく、焼き上がった色や質感も大切な魅力です。

寒冷地では「焼過」をおすすめすることがあります

ただし、使用する環境によっては吸水率の違いが重要になる場合があります。そのひとつが寒冷地です。レンガ内部に入った水が凍結と融解を繰り返す環境では、吸水率が低く、より焼き締まったレンガの方が有利になる場合があります。そのため岡田煉瓦では、寒冷地で使用される場合には、吸水率の低い焼過をおすすめすることがあります。レンガは、どこで、どのように使うかによって選び方も変わります。

一方で「水を吸う」という性質もレンガの特徴

では、吸水率の高い赤は劣っているのでしょうか。これも、そう単純ではありません。レンガは内部に細かな孔を持つ多孔質体です。その細かな孔を通して毛細管現象で水を吸い込み、内部に水を保持する性質があります。近年では舗装材の保水性に注目されることもあります。そうした観点から考えれば、水を吸いやすいという性質にも意味があります。だからこそ、「吸水率が低い=良いレンガ」「吸水率が高い=悪いレンガ」と数字だけで判断するものではないと私たちは考えています。使用する場所や目的に必要な性能を確認したうえで、最後はレンガらしい色や表情を楽しんで選んでいただく。それでいいのではないでしょうか。

レンガは「呼吸する」

レンガに水をかけると、水は表面にずっと残っているわけではありません。細かな孔から内部へ吸い込まれていきます。そして、条件が変われば内部に含まれた水分は再び外へ出ていきます。こうしたレンガの性質を、私たちは時々、

「レンガは呼吸する」

と表現します。もちろん、人間のように呼吸しているわけではありません。しかし、レンガ内部には目では見えない無数の隙間があり、水分を吸ったり放出したりしています。今回の動画は、その見えない内部構造を想像するための、とても分かりやすい実験になりました。

水をかけると、レンガの中が見えてくる

今回比較したのは、吸水率8.5%と6.5%。わずか約2%の違いです。しかし、その背景には、

焼成温度

粒子の結合

焼き締まり

内部の隙間

吸水率

強度

という、レンガが焼き物としてできあがっていく仕組みがあります。普段レンガを見ているだけでは、内部の粒子を見ることはできません。しかし、水をかけて吸い込み方を見ると、目には見えないレンガ内部の違いを少し想像できるようになります。なぜ温度を上げるとレンガが小さくなるのか。なぜよく焼いたレンガは強くなるのか。なぜ同じ原料なのに吸水率が変わるのか。こうしたレンガの性質が、今回の小さな実験につながっています。レンガは、土を成形して焼くという、とてもシンプルな材料です。でも、深く見ていくとなかなか面白い。今回のコラムと動画が、レンガという素材を少し深く知っていただくきっかけになればと思います。

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