2026.08.20
レンガベンチのしくみ
― 中はコンクリート、外側をレンガで化粧積み ―

前回のコラムでは、「街を公園にする。れんがベンチという小さな提案」として、歩きたくなる街には「少し休める場所」も大切ではないか、という話を書きました。今回は、その続きです。では実際に、れんがベンチはどのようにつくられているのでしょうか。見た目は、れんがを積み上げた大きな塊のように見えます。しかし、すべてをれんがだけでつくるわけではありません。ひとつの方法として、中をコンクリートでしっかりとつくり、その外側をれんがで化粧積みするという構成があります。今回は、れんがベンチの「中身」をご紹介します。
見えるところに、れんがを使う
れんがベンチの大きな魅力は、やはりその見た目です。土からつくられたれんがには、一つひとつ微妙な色幅があります。積み上げることで目地が入り、陰影も生まれます。コンクリートだけでつくったベンチとは違う、少しやわらかく、重厚感のある表情になります。一方で、ベンチとして長く使うためには、内部の構成も大切です。そこで、内部をコンクリートでつくり、外から見える部分をれんがで仕上げます。これが「化粧積み」という考え方です。言い換えると、強さを受け持つ部分と、景観をつくる部分を分けて考える。そんなつくり方です。
中はコンクリートでしっかりと
添付の断面図では、れんがの内側にコンクリートがあります。このコンクリート部分が、ベンチ本体をしっかりと支えます。その外側にモルタルを使ってれんがを積み、表面を仕上げていきます。一見すると「れんがだけでできたベンチ」に見えますが、内部にはしっかりとした下地がある。この構成にすることで、れんがの表情を生かしながら、屋外で使うベンチとしての安定性も確保しやすくなります。
座面にも、ちょっとした工夫があります
屋外に設置するベンチなので、雨のことも考えなければなりません。断面図を見ると、上面には水勾配を設けています。完全に水平につくるのではなく、わずかに傾きをつけることで、雨水がたまりにくくなります。見た目にはほとんど分からないような小さな工夫ですが、屋外で長く使うものだからこそ、こうした納まりが大切です。また、れんが同士の間には目地モルタルを入れます。れんがを並べるだけではなく、目地まで含めて一つの仕上げとして考えることで、れんがらしい表情が生まれます。
足元からベンチを支える
れんがベンチは、地面の上にそのまま置いているわけではありません。下には基礎となるコンクリートがあり、そのさらに下には再生クラッシャランなどを敷いて地盤を整えます。つまり、
地盤 → 基礎 → コンクリート躯体 → れんがの化粧積み
という順番で、下からしっかり支えていく考え方です。完成した状態では見えない部分ですが、長く使うためには、むしろこうした見えない部分が大切です。
れんがを全部使わなくても、れんがらしさはつくれる
「れんがベンチ」と聞くと、「中まで全部れんがでつくらないと、れんがベンチとは言えないのでは?」と思われるかもしれません。私は、そうではないと思っています。大切なのは、その材料の良さをどこで生かすかです。れんがには、土から生まれた素材ならではの色や質感があります。その魅力が最も伝わる外側にれんがを使い、内部はコンクリートで合理的につくる。そうすることで、れんがの美しさと、現代の施工方法の両方を生かすことができます。「全部れんがでつくる」ことが目的ではなく、れんがだからこそ生まれる景観をつくること。私はそこが大切だと思っています。
花壇と組み合わせても面白い
前回のコラムでも触れましたが、この考え方は花壇にも応用できます。例えば、れんが花壇の一部だけを少し幅広くして、腰掛けられるようにする。植栽の緑があり、その横にれんがのベンチがある。それだけで、単なる花壇から、
「人が立ち止まり、少し休める場所」
に変わります。ベンチと花壇を別々につくるのではなく、一つの構造物として考える。そうすると、限られたスペースでも、街の中に小さな居場所をつくることができます。
見た目はシンプル。でも、中には理由がある
完成したれんがベンチを見ると、とてもシンプルです。れんがを積んだ、四角いベンチ。しかし断面を見ると、
- 内部を支えるコンクリート
- 外側を仕上げるれんが
- れんがを積むためのモルタル
- 雨水を流すための水勾配
- ベンチを支える基礎
- その下の地盤
と、いくつもの要素でできていることが分かります。完成後には見えないところまで考えることで、はじめて長く使えるものになります。これは、れんがベンチに限ったことではありません。建物でも舗装でも、表から見える材料の裏側には、それを支える仕組みがあります。きれいな景観は、見えない部分に支えられている。れんがベンチの断面図を見ると、そんなことも感じます。
れんがを、もっと身近な街の中へ
れんがというと、建物の外壁や舗装を思い浮かべる方が多いと思います。でも、使い方はそれだけではありません。ベンチ、花壇、階段、門まわり。少し使うだけでも、その場所の雰囲気を変えることができます。中はコンクリートでしっかりとつくり、外側をれんがで美しく仕上げる。化粧積みという方法を使えば、れんがをもっと気軽に街の中へ取り入れることができます。土から生まれたれんがが、街に少しの温かさと豊かさを加える。前回ご紹介した「街を公園にする」という考え方を、実際の形にする方法の一つが、このれんがベンチなのだと思います。街を歩く人が少し腰掛ける。花を眺める。誰かを待つ。また立ち上がって歩き始める。そんな何気ない時間を支える場所に、れんがを使っていただけたらうれしく思います。





