2026.08.22
レンガの特注品は、なぜ高くなる?

「色はこのままで、サイズだけ少し変えられませんか?」
レンガのご相談をいただいていると、このような特注品についてお問い合わせいただくことがあります。岡田煉瓦では、定番品とは異なるサイズのレンガを製造することもできます。ただし、私たちが特注品をおすすめするのは、「この寸法でなければならない」という理由や強いこだわりがある場合です。なぜなら、結論から言えば、特注品はどうしても高くなるからです。今回は、色は岡田煉瓦の定番色を使い、サイズだけを少し変更する場合を例に、なぜ特注品が高くなるのか、そして私たちが定番サイズをおすすめする理由をご紹介します。
定番品は「注文数量だけ」をつくるわけではない
まず、定番品と特注品では製造の考え方が違います。例えば、定番品を10,000個ご注文いただいたとします。だからといって、10,000個だけを製造するとは限りません。その時の在庫状況や今後の出荷予定を考え、20,000個まとめて製造することもあります。10,000個を今回の現場へ出荷し、残った10,000個は在庫として保管して、次の現場へ出荷できます。つまり定番品の場合、注文数量以上につくっても、それが無駄にならないのです。
特注品は「余っても次に使えない」
ところが、特注品は違います。特注品は、基本的にその現場のためにつくるレンガです。例えば「定番品より10mm短い」というだけでも、次にまったく同じ寸法を必要とする現場が現れるとは限りません。そのため、必要数量より大幅に多く製造して在庫しておくことができません。できるだけ余らせないように製造数量を決めます。実際には、必要数量を確保するため、1割程度多く製造することを目安に数量を決めます。余った特注品は、別の現場で使われないまま長期在庫となり、最終的には廃却せざるを得ないことが多くあります。定番品なら「在庫」になるものが、特注品では「廃却」になる可能性がある。これが大きな違いです。
定番品は、余っても「在庫」になります。
特注品は、余れば「廃却」の可能性があり、足りなければ「再製造」になります。
だからといって、ギリギリにつくるのも怖い
では、余らないように必要数量ギリギリだけつくればいいのか。そう簡単でもありません。レンガは焼き物です。成形して、乾燥させ、窯で焼き上げるまで、最短でも約1か月かかります。そして、焼き上がるまで最終的に何個の良品が取れるかを完全に確定することはできません。割れや欠け、寸法などによって、想定より良品が少なくなることもあります。特注品は余りを少なくするため製造数量を絞っていますから、少し歩留まりが悪くなるだけで、「必要数量に届かない」というリスクがあります。そして、これが特注品で最も怖いところです。
数が足りなければ、もう一度つくらなければならない
もし必要数量に届かなければ、不足した分をもう一度製造することになります。しかし、レンガは不足した100個だけを翌日につくり足せるような製品ではありません。再び成形し、乾燥させ、窯で焼成する必要があります。特注品のために焼成条件を変更していたのであれば、その段取りももう一度必要になります。不足している数量はわずかでも、「特注品をもう一度製造する」という一連の工程が発生するのです。これはメーカーにとって大きな損失です。だからといって、作り直しを絶対に避けるために大量につくれば、今度は余った特注品を処分することになります。
つくりすぎれば余る。
少なすぎれば、つくり直す。
この両方のリスクを考えながら製造数量を決める必要があるのが、特注品です。
トンネル窯は「大量生産」が得意
さらに、岡田煉瓦の製造設備にも理由があります。岡田煉瓦では、トンネル窯という連続式の窯を使ってレンガを焼いています。トンネル窯は、同じ条件でたくさんのレンガを安定して焼き続けることを得意とする設備です。その反面、少量だけ条件を変えて焼くことは得意ではありません。特注品の種類によっては、その製品を焼くために窯の焼成条件を変更することがあります。温度を変更しても、すぐに窯全体が設定した温度になるわけではありません。そこで温度が安定するまでの間、製品として出荷しない「ダミー台車」を流します。岡田煉瓦では条件を切り替える際、特注品を載せた台車の前に2台、後ろに2台、合計4台程度のダミー台車を使用する場合があります。レンガの積載数量に換算すると、ダミー台車4台分で約3,360本分の製造スペースを使用する計算になります。この負担は、製造数量が多ければ多くのレンガで分担できます。しかし、製造数量が少なくなればなるほど、1個あたり、1㎡あたりの負担は大きくなります。
「サイズを少し変えるだけ」でも高くなる理由
お客様から見れば、「色はいつもの赤でいい」「サイズを少し変えるだけ」という特注かもしれません。しかしメーカー側では、その現場のために、専用寸法での製造、歩留まりへの対応、余剰品のリスク、再製造のリスク、窯の条件変更などさまざまな負担が発生します。その結果、条件によっては、1㎡あたりの価格が定番品と比較して5割程度高くなることも珍しくありません。「特注だから高く設定している」というよりも、特注品をつくるために必要なコストとリスクを積み上げた結果、高くなるというのが実際のところです。
300㎡未満なら、まず定番サイズを
岡田煉瓦では、オーストラリアのレンガ寸法をもとにした230×114×60mmを、舗装レンガの基本サイズの一つとしています。特に300㎡を下回る現場では、まず定番サイズで納められないかをご検討いただくことを強くおすすめしています。もちろん、300㎡を超えれば特注品が定番品と同じ価格になるわけではありません。特注品である以上、余剰品や再製造などのリスクは残ります。300㎡はあくまで、特注品を検討する際の一つの目安です。
レンガは「決まったサイズを組み合わせる」素材
少し変わった例えですが、私はレンガをレゴブロックのようなものだと考えることがあります。レンガには基本となる寸法があります。その決まったサイズを、目地や割付、色、並べ方などを工夫しながら組み合わせ、一つの景観をつくっていく。「あと10mm小さければ」「もう少し幅があれば」と感じることもあるかもしれません。しかし、そこで特注品をつくる前に、定番サイズと目地、割付の工夫で納めることができないか。一度考えていただければと思います。決められた寸法の中で組み合わせることも、レンガという素材の特徴の一つです。
それでも特注品をつくる理由
ここまで読むと、「岡田煉瓦は特注品をつくりたくないの?」と思われるかもしれません。そうではありません。「この建築だから、この寸法にしたい」「この場所だから、どうしてもこのレンガが必要」そんな理由があるのであれば、私たちも一緒に考えます。特注品だからこそ実現できる建築や景観もあります。だから私たちは、何でも特注にするのではなく、定番品でできることと、特注品だからできることを一緒に考えたい。そう思っています。レンガは、一度施工されれば何十年、場合によっては100年以上残っていく建材です。だからこそ、価格だけでなく、その寸法を特注する意味まで一緒に考える。そのうえで「このレンガをつくりたい」となれば、私たちメーカーもできる限り力になりたいと思っています。





