OKADA BRICK 岡田煉瓦製造所

Column

コラム

「謹製」という言葉に込めて

受け継がれる、
 ものづくりの姿勢

2026.10.24

レンガの色は、写真だけでは分からない。

― 補修材を選ぶために、知ってほしい撮影のコツ ―

「このレンガと同じ色はありますか?」

最近、こんなお問い合わせが増えています。

「既存のレンガが破損したので、補修したい」

「以前のメーカーが製造をやめてしまったので、代わりになるレンガを探している」

国内のレンガメーカーが少なくなる中、弊社でも他社製品の補修材についてご相談いただく機会が増えてきました。古い製品とまったく同じものをご用意することは簡単ではありません。それでも、できるだけ既存のレンガに馴染むものをご提案したいと考えています。その際、施工業者や販売店の方から現場写真を送っていただくことがあります。ところが、写真を見ても、肝心のレンガの色が分からないことが少なくありません。

「写真があるのに、なぜ色が分からないの?」

今回は、2008年に撮影した宮崎県の日向市駅前のレンガ舗装を例に、写真の色について考えてみたいと思います。なお、今回の日向市駅前は補修の事例ではありません。写真の色の違いを説明するために、当時撮影した写真を使用しています。

① レンガだけの写真では、判断が難しい。

まずは、こちらの写真をご覧ください。

淡いベージュやピンク、少し青みがかった色など、さまざまな色が混ざっているように見えます。しかし、ここで一つ問題があります。

このレンガは、もともとこの色なのでしょうか。

それとも、撮影したときの光の影響で、実際とは違う色に写っているのでしょうか。写真にはレンガしか写っていないため、判断する手掛かりがありません。実は、これが補修材の選定で最も困る写真の一つです。

写真には「色かぶり」がある。

写真の色は、撮影したときの光によって変わります。例えば、夕方の夕日に照らされれば赤みが強くなり、青空からの光や日陰の影響で青みが強くなることがあります。こうした現象を「色かぶり」と呼びます。写真の色を考える際には、「色温度」という言葉も使われます。同じレンガでも、撮影条件によって赤っぽく見えたり、青っぽく見えたりするのです。現在のスマートフォンやデジタルカメラには、自動で色を調整する機能があります。そのため、以前より自然な色に写ることが増えました。しかし、自然に見える写真が、必ずしも実物の色を正確に表しているとは限りません。カメラが自動で補正した結果、見た目には違和感がなくても、レンガ本来の色とは異なっている場合があります。補修材を選ぶ側としては、そこが難しいところです。

② 白いものが写っていると、判断しやすい。

では、次の写真をご覧ください。

こちらも同じ場所で撮影された写真です。写真①とは違い、レンガだけでなく、駅舎や道路、樹木、タクシーなどが写っています。ここで注目していただきたいのが、白いタクシーです。もともと白い車体のはずですが、この写真では少し青みがかって見えます。つまり、写真全体に青い色かぶりが生じている可能性があると分かります。レンガだけを写した写真では判断できなかったことが、周囲のものが写ることで見えてくるのです。特に、もともとの色が分かっている白いものは、色を判断する際の大切な手掛かりになります。

③ 色を補正すると、ここまで変わる。

写真の中に白いものが写っていれば、画像編集ソフトを使って色を補正することもできます。例えば、Photoshopなどでは、本来白いはずの部分を基準にして、写真全体の色合いを調整する方法があります。今回は、写真②に写る白いタクシーを手掛かりに、AIを使って色を調整してみました。

写真②と比べると、青みが抑えられ、レンガの色合いがずいぶん違って見えると思います。もちろん、これで実物の色を完全に再現できたとは限りません。白い車体にも影や周囲の光が映り込みますし、AIによる補正にも限界があります。それでも、何も手掛かりがない写真に比べれば、色を判断するための情報が増えます。画像編集ソフトを使えない方でも、今ではAIを活用して色補正を試みることができます。

少しでも実物に近い色を把握できれば、補修材の候補を絞り込む精度も上がります。

撮影するときは、白い紙を一枚。

では、現場でどのように撮影していただくとよいのでしょうか。難しい撮影技術は必要ありません。私たちからお願いしたいのは、ほんの少しの工夫です。

まず、レンガと一緒に白い紙を写してください。

できれば、印刷されていない白い紙を、レンガの近くに置いて撮影していただけると助かります。白い紙が写っていれば、写真に色かぶりがあるかどうかを考える手掛かりになります。さらに、次のような写真があると、より判断しやすくなります。

  • レンガの接写:表面の質感や色の違いが分かる写真
  • 少し離れた写真:周囲のレンガとの色幅や混ざり方が分かる写真
  • 白い紙を一緒に写した写真:色補正の参考になる写真

可能であれば、直射日光と強い影が混在する場所を避け、明るい日陰など、光の条件がなるべく均一な場所で撮影していただくと、さらに助かります。白い紙もレンガも、できるだけ同じ光が当たる位置に置くことがポイントです。たったこれだけでも、送っていただく写真の情報量は大きく変わります。なお、白い紙にも多少の色の違いがあります。厳密な色合わせには、専用のグレーカードやカラーチャートを使用する方法もありますが、まずは身近な白い紙を一枚入れていただくだけでも、参考になります。

写真を送るだけでは、分からないことがある。

補修材のお問い合わせをいただく際、写真を送っていただけること自体は、とてもありがたいことです。現場まで簡単に伺えない場合もありますし、写真は状況を把握するための大切な資料です。ただ、写真に写っている色が、本当に実物の色なのか。そこが分からなければ、メーカーとしても自信を持って代替品をご提案することが難しくなります。だからこそ、今回のような撮影のポイントを知っていただけるとうれしいのです。私たちも、送っていただいた写真を丁寧に確認し、必要に応じて色補正を行いながら、できるだけ既存のレンガに近いものを探していきます。もちろん、写真だけで最終的な色合わせができるとは限りません。最終的には現物サンプルを並べ、実際の光の下で確認することが大切です。それでも、最初の写真の精度が上がれば、候補を絞り込む段階での判断がずっとしやすくなります。

大切にしたい街並みがある。

今回、写真の色かぶりを説明するために使用した日向市駅前。この「日向駅周辺地区」は、2014年に「都市景観大賞」の国土交通大臣賞(都市空間部門・大賞)を受賞しています。

ただし、賞を受賞したから、大切にしなければならないわけではありません。そこに暮らす方々にとって、日々目にする駅前の風景は、暮らしの一部です。通勤や通学で歩く道。家族や友人と待ち合わせをする駅前。何気なく見ているレンガ舗装も、街の風景をつくる大切な要素の一つだと思います。日向市駅前に限らず、全国には、そうした大切にしたい街並みがたくさんあります。そして、建物や舗装は、長い年月の中で補修が必要になることがあります。そのとき、できるだけ周囲の風景に馴染む材料を使うことができれば、これまで大切にされてきた街並みを、自然な形で次の世代へつないでいけるのではないでしょうか。

補修は、みんなで完成させる仕事。

国内のレンガメーカーが少なくなる中で、以前と同じ製品を手に入れることが難しくなっています。だからこそ、私たちメーカーも、できる限り補修のお手伝いをしたいと考えています。補修材の選定は、メーカーだけで完結する仕事ではありません。現場の状況を知っている施工業者の方。材料を探し、情報をつないでくださる販売店の方。そして、代替品を提案する私たちメーカー。それぞれが少しずつ協力することで、より既存のレンガに馴染む補修材を選ぶことができます。

「レンガの写真を撮るときは、白い紙を一枚入れてみる。」

今回は、そんな小さなお願いです。私たちが細かなことをお願いするのは、少しでも既存のレンガの色に近づけたいからです。写真の撮り方を少し工夫していただくだけでも、私たちができることは増えます。

仕事は、一人では完成しません。

お互いに知恵を出し合い、協力することで、よりよい仕事ができる。そして、その積み重ねが、地域の方々にとって大切な街並みを、次の世代へつなぐことにつながるのだと思います。

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