2026.08.25
レンガは、サイズでつくりやすさが変わる。― 製造設備から見る「251」の合理性
レンガの価格は、原料や焼成方法だけで決まるわけではありません。実は、レンガの「サイズ」も価格に大きく関係しています。岡田煉瓦では、さまざまな寸法のレンガや特注品を製造しています。しかし、同じレンガでも、サイズによって「つくりやすいもの」と「つくりにくいもの」があります。つくりやすければ、一度にたくさん製造でき、生産性が上がります。反対に、設備との相性が悪ければ、一度に製造できる数量が減ったり、人の手による作業が増えたりします。当然、生産コストも高くなります。以前のコラムでは「なぜ特注レンガは高くなるのか」をご紹介しました。今回はもう少し踏み込んで、岡田煉瓦の製造設備とレンガのサイズには、どのような関係があるのか。実際の製造工程を追いながら考えてみたいと思います。
① 真空土練機 ― 大きな断面で押し出す
レンガづくりは、粘土を練り、真空土練機から押し出すところから始まります。真空土練機の先端には、「口金」と呼ばれる型を取り付けます。この口金の大きさによって、押し出される粘土の断面寸法が決まります。基本的には、一度に押し出せる断面を大きく使った方が、同じ時間でより多くのレンガを成形できるため、生産性は高くなります。ただし、ここだけ大きくすればいいわけではありません。次の工程にも、それぞれ設備上の制約があります。

▲ 真空土練機。先端に取り付ける「口金」によって、押し出す荒地の断面寸法が決まります。
② 切断機と乾燥板 ― 何個取れて、何個載るか
押し出した粘土は、ピアノ線を使った切断機でレンガの大きさに切断します。岡田煉瓦の切断機には約550mmの範囲にピアノ線をセットする「カセット」があります。たとえば、焼き上がり60mm厚のレンガの場合、焼成前の荒地では約66mm。この寸法なら、一度に8個を切断できます。そして、切断したレンガは乾燥板へ載せます。岡田煉瓦の乾燥板は、長さ700mm × 幅260mmです。ここでも重要なのが、
「乾燥板の上に、どれだけムダなくレンガを載せられるか」
ということです。岡田煉瓦のフラグシップモデル「251」は、焼き上がり寸法が約230×115×60mm。焼成前の荒地では、およそ253×125×66mmになります。この寸法が、乾燥板に非常にうまく収まります。1枚の乾燥板に8個。切断機で一度に8個切り、その8個を乾燥板に効率よく載せる。工程と工程がうまくつながっています。

▲ 乾燥板に並んだ251の荒地。1枚に8個載せることができ、乾燥板を効率よく使えます。
③ 乾燥台車 ― 高さにも制約がある
乾燥板は、そのまま乾燥台車に載せて乾燥工程へ進みます。岡田煉瓦の乾燥台車には、乾燥板を56枚載せることができます。ここで新たに出てくるのが「高さ」の制約です。乾燥台車に収められる高さは約130mm。251の荒地寸法は約125mmです。つまり、
130mmのスペースに対して約125mm。
かなりギリギリまで設備を使っています。小さくすればもちろん入ります。しかし、小さくなれば同じ乾燥台車で運べるレンガの総量に対して空間のムダが増えることになります。反対に大きすぎれば、そもそも設備に入りません。設備の限界を超えず、できるだけ空間をムダにしない。これも生産性を考えるうえで大切なポイントです。

▲ 乾燥板を載せる乾燥台車。高さには約130mmの制約があり、251の荒地寸法約125mmは、その範囲を効率よく使います。
④ 焼成台車 ― 500mmの中にどう積むか
乾燥が終わると、いよいよ焼成です。岡田煉瓦では、焼成台車の上にレンガを積み、トンネル窯の中を通して焼成します。焼成台車では、500×500mmのマスを基準としてレンガを積んでいきます。ここでもレンガの寸法が生産性に影響します。251は乾燥後の白地で約243mm。2個並べると、243mm × 2個 = 約486mmです。500mmに対して約486mm。ここでも、きれいに収まります。わずかな余裕を残しながら、焼成台車のスペースを効率よく使える寸法になっています。

▲ 焼成台車への積み方を確認している様子。焼成台車は500×500mmのマスを基準に積み付けます。レンガのサイズによって、限られたスペースをどれだけ効率よく使えるかが変わります。
⑤ 自動積込機 ― 機械でできるか、人が積むか
そして、もう一つ大きな違いがあります。自動積込機です。岡田煉瓦の製造ラインは、主に210×100×60mmの日本サイズと230×114×60mmのサイズを想定してつくられています。この2つのサイズであれば、自動積込機を使うことができます。一方、設備に対応していない特殊な寸法になると、人の手で積み込まなければならない場合があります。手積みの場合、作業には複数人が必要になります。同じ「レンガをつくる」でも、
機械が自動で積んでくれるのか。
人が一つひとつ積むのか。
これだけでも、生産性には大きな違いが生まれます。

▲ 特殊寸法など自動積込機に対応しない場合は、人の手で積み込みます。機械積みと比べて人手が必要となり、生産性にも差が出ます。
大きなレンガ=効率がいい、ではない
近年は大型レンガへの需要もありますが、レンガが大きくなるほど、乾燥や焼成が難しくなり、製造時の歩留まりが悪くなるリスクがあります。また、岡田煉瓦が力を入れている舗装用レンガでは、長さが大きくなることで曲げ強度についても考える必要があります。つまり、「大きければ大きいほど生産性がいい」というわけではありません。成形できるか。切断できるか。乾燥板に効率よく載るか。乾燥台車に収まるか。焼成台車に効率よく積めるか。自動積込機が使えるか。そして、安定して乾燥・焼成できるか。これらすべてのバランスが重要です。
製造設備には、それぞれ「ちょうどいいサイズ」がある
こうして製造工程を順番に見ていくと、レンガのサイズと価格の関係が少し見えてきます。一つの工程だけを考えてサイズを決めることはできません。
真空土練機 → 切断機 → 乾燥板 → 乾燥台車 → 焼成台車 → 手積み/自動積込機
それぞれに寸法上の制約があります。そして、生産性を高めるには、その制約の中で設備をできるだけ効率よく使うことが重要です。だから、同じ原料を使ったレンガでも、サイズが変われば価格が変わります。特殊なサイズが高くなるのは、単純に「特注だから高い」というだけではありません。一度に製造できる数量が減ったり、設備に空きが生まれたり、人の作業が増えたりする。そこには、製造上の理由があります。
「251」は、ムダが少ない
岡田煉瓦のフラグシップモデルである「251」。焼き上がり寸法は約230×115×60mmです。長くつくってきた定番のレンガですが、今回あらためて製造工程から見てみると、このサイズの合理性がよく分かります。切断機で一度に8個。乾燥板に8個。乾燥台車の高さ約130mmに対して、荒地約125mm。焼成台車の500mmに対して、乾燥後約243mmを2個並べて約486mm。そして、自動積込機にも対応する。
各工程で、ムダが非常に少ない。
もともと岡田煉瓦の製造ライン自体が、210×100×60mmや230×114×60mmといったレンガを効率よく製造することを想定してつくられているので、当然といえば当然なのかもしれません。しかし、その「当然」の中には、長年レンガをつくってきた製造設備と寸法の関係があります。
レンガの価格には、ちゃんと理由があります。
レンガを見るとき、どうしても色や表情、寸法に目が行きます。でも、そのレンガができるまでには、たくさんの設備を通っています。ほんの数センチ、数ミリ寸法が変わるだけでも、製造ラインとの相性は変わります。だから岡田煉瓦では、特注レンガのご相談をいただいたとき、単に「つくれる・つくれない」だけではなく、
「どういう寸法にすれば、無理なく効率よくつくれるか」
ということも考えています。自由な寸法でつくることも、もちろんレンガメーカーの仕事です。でも、設備との相性がいい寸法を選ぶことも、レンガを賢くつくる方法の一つです。そして岡田煉瓦の「251」は、製造工程を最初から最後まで追ってみると、改めてよくできたサイズだと感じます。
ムダなくつくる。
安定してつくる。
そして、長く使えるレンガをつくる。
定番サイズには、定番になってきた理由があります。





