2026.11.03
レンガを焼く。1日2,400Lの重油を使って。
― 15人のレンガメーカーが、日本のレンガを未来につなぐ ―
レンガを焼くために、私たちは1日約2,400Lの重油を使っています。仮に重油が1L=110円だとすると、1日26万4,000円。30日間連続で稼働すれば、約800万円。これは材料費でも、人件費でもありません。レンガを焼くための燃料費だけの話です。私たち岡田煉瓦製造所は、愛知県安城市にある従業員15人の小さなレンガメーカーです。しかし、工場には全長60mのトンネル窯があり、最大で月40万個のレンガを生産する能力があります。たった15人の会社が、これほど大きな設備を動かしている。なぜ、レンガをつくるためにこれほどの設備とエネルギーが必要なのでしょうか。そして、なぜ私たちは、今も日本でレンガを焼き続けているのでしょうか。今回は、普段あまり知られることのないレンガづくりの世界をご紹介します。
60mのトンネル窯。48時間以上かけて焼き上げる
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写真:全長60mのトンネル窯内部。レンガを積んだ台車が窯の中を進みます。
弊社のトンネル窯は、1987年に導入した全長60mの連続式焼成窯です。レンガを積んだ台車が、長い窯の中をゆっくりと進んでいきます。焼成には48時間以上。徐々に温度を上げ、高温で焼き締め、ゆっくりと冷却していきます。レンガは、単に粘土を固めただけの製品ではありません。粘土を成形し、十分に乾燥させ、高温で焼き上げることで、強度や耐久性を備えた焼き物になります。炎の当たり方や焼成条件によって、色合いや風合いも変わります。同じ粘土からつくっても、一つひとつに表情が生まれる。それが、焼き物であるレンガの魅力です。そして、この焼成工程を支えているのが、大量の燃料です。
1日2,400L。ドラム缶12本分の重油

写真:トンネル窯の火入れ作業。バーナーに着火し、窯の温度を徐々に上げていきます。
弊社のトンネル窯では、稼働時に1日約2,400Lの重油を使用します。2,400Lと言われても、なかなか想像できないかもしれません。一般的な200Lのドラム缶に換算すると、1日で12本分です。仮に重油価格を110円/Lとして計算すると、次のようになります。
| 稼働期間 | 重油使用量 | 燃料費 |
|---|---|---|
| 1日 | 2,400L | 26万4,000円 |
| 10日間 | 24,000L | 264万円 |
| 30日間 | 72,000L | 792万円 |
※重油単価110円/L、使用量2,400L/日と仮定した参考計算です。実際の燃料費は燃料価格や操業条件によって異なります。
これほどの燃料を使って、私たちはレンガを焼いています。もちろん、大きな窯には理由があります。大量のレンガを安定した品質で製造するためです。トンネル窯は、レンガの大量生産を可能にする設備であり、日本のレンガづくりを支えてきた技術でもあります。しかし、その能力を維持するには、大きな費用と日々の管理が必要です。
19,000Lの重油タンク。それでも約8日分

写真:岡田煉瓦製造所の屋内タンク貯蔵所。貯蔵量19kLの設備です。
弊社には、19kL(19,000L)の屋内タンク貯蔵所があります。19,000Lと聞くと、相当な量に感じると思います。しかし、1日に2,400Lの重油を使うトンネル窯では、単純計算で約8日分に相当します。
※貯蔵量を1日の使用量で割った目安であり、実際の使用可能日数を示すものではありません。
レンガを焼き続けるためには、燃料を安定して確保することも欠かせません。窯だけではなく、燃料の貯蔵設備や供給設備も必要です。さらに、レンガづくりには、成形設備、乾燥設備、搬送設備など、さまざまな設備が必要になります。レンガをつくるという仕事は、想像以上に大きな設備によって支えられています。
レンガメーカーは、簡単には始められない
レンガを製造するには、まず大きな設備投資が必要です。全長60mのトンネル窯。粘土を練り、成形する機械。成形したレンガを乾燥させる設備。そして、焼き上がったレンガを運び、保管するための設備。これらを一から整えるには、莫大な費用がかかります。しかも、設備はつくれば終わりではありません。高温で使用する窯は、長年の操業によって少しずつ傷みます。炉材の交換や補修にも、多額の費用が必要です。さらに、レンガづくりには広い土地が欠かせません。原料となる粘土を保管する場所。成形したレンガを乾燥させる場所。完成したレンガを保管する場所。レンガは重く、かさばる製品です。そのため、製造から出荷まで、多くの場所を必要とします。そして、これだけの設備を必要とする一方で、レンガの市場は決して大きくありません。
大きな設備、大量の燃料、広い土地。そして、限られた市場。
これらの条件が重なるため、今から新しくレンガ製造業を始めることは、容易ではないと考えています。日本国内で、大型のトンネル窯を使って建築・舗装用のレンガを製造するメーカーは、今では数えるほどしかありません。私たちは、その一社です。
たった1個のレンガ。その向こう側にあるもの

写真:岡田煉瓦製造所の普通煉瓦(210×100×60mm)。
写真に写っているのは、ごく一般的な赤いレンガです。大きさは210×100×60mm。特別な装飾があるわけでもありません。しかし、この1個のレンガをつくるために、私たちは粘土を用意し、成形し、乾燥させ、そして高温で焼き上げています。全長60mのトンネル窯を動かし、大量の燃料を使い、15人の従業員がそれぞれの仕事を担っています。そうして焼き上がったレンガが、皆さんのもとに届きます。レンガは、製造するまでに時間もエネルギーも必要な素材です。しかし、一度使われれば、長い年月にわたって建物や街の一部になります。年月とともに風合いが変わり、周囲の景色になじんでいく。古いレンガの建物や舗装が、今も多くの人に親しまれているのは、そんな魅力があるからではないでしょうか。
つくるには大きなエネルギーが必要でも、長く使い続けられる。
私たちは、そこにもレンガという素材の価値があると考えています。
日本のレンガを、これからも日本で焼き続ける
私たちは、創業1897年のレンガメーカーです。約130年にわたり、レンガをつくり続けてきました。時代とともに、建築材料も施工方法も大きく変わりました。レンガ以外にも、便利で優れた建築材料はたくさんあります。だからこそ、私たちはすべてをレンガにしてほしいとは思っていません。
建物の一部でもいい。
庭の一角でもいい。
歩道の一部分でもいい。
そこに、本物の焼き物であるレンガを使っていただきたいのです。私たちが時間をかけ、手間をかけ、魂を込めて焼き上げたレンガです。一つひとつは小さなレンガですが、それが積み重なれば、建物になり、道になり、街の風景になります。そして、その風景は次の世代へと受け継がれていきます。日本のレンガづくりを未来に残すために必要なのは、私たちメーカーの努力だけではありません。レンガを設計に取り入れてくださる方。実際に施工してくださる方。そして、レンガを選んでくださる方。皆さんの存在があって、初めてレンガづくりは続いていきます。私たちはこれからも、製造現場のこと、レンガのこと、そしてレンガの魅力を発信していきます。
「顔の見える煉瓦屋」として、もっと身近に、もっと気軽にレンガを使っていただける会社を目指します。
日本のレンガを、これからも日本で焼き続ける。そのために、今日も私たちはレンガと向き合っています。
想いをカタチにして積み上げる。





