2026.10.22
レンガタイルは、床にも使える。
― 馴染みがないことと、使えないことは違う ―
先日、お客様から「レンガタイルを住宅の室内床に使いたいのですが、使用できますか?」というお問い合わせをいただきました。結論から申し上げると、レンガタイルを床に使用した実績はあります。ただし、どのような場所でも、どのような施工方法でも使用できるという意味ではありません。私は煉瓦を製造する立場ですので、施工方法の細かな部分まで専門的に説明できるわけではありません。それでも、メーカーとしてお伝えできることはあります。それは、実際の施工事例と、なぜレンガタイルを床に使用できるのかという基本的な考え方です。今回のコラムでは、レンガタイルを床に使うことについて、少し考えてみたいと思います。
馴染みがないと、不安になる。
煉瓦は、世界各地で長い歴史を持つ建材です。童話「三匹の子豚」でも、わらの家、木の家はオオカミに吹き飛ばされますが、最後に残るのは煉瓦の家でした。もちろん童話の話ですが、煉瓦が丈夫な建材として親しまれてきたことを感じさせます。一方、日本では住宅といえば木造が中心です。明治時代から残る煉瓦建築はありますが、欧米と比べると、煉瓦は日常の住まいに馴染みの薄い建材なのかもしれません。普段から私たちはタイルの床を歩いています。屋外では、煉瓦舗装も当たり前のように使われています。ところが「レンガタイルを住宅の床に使う」となると、途端に不安になることがあります。
「薄いレンガタイルでも割れないだろうか」
「吸水性があるけれど、汚れは大丈夫だろうか」
「普通のタイルと同じように考えてよいのだろうか」
誰しも、自分の中に前例がないものに出会うと、不安になることがあると思います。特に、自分が採用を決める立場になれば、なおさらです。だからこそ、メーカーとして実績をご紹介し、ただ「大丈夫です」と言うのではなく、その理由もお伝えしたいと考えています。
60mm厚の煉瓦と、20mm厚のレンガタイル。
まず、床にかかる荷重について考えてみます。弊社では、厚さ60mmや80mmの舗装用煉瓦を製造しています。こうした舗装用煉瓦は、適切に設計された路盤や敷砂の上に施工する、サンドクッション工法で使用されることがあります。舗装用煉瓦には、歩行や車両などによる荷重に耐えるための強度が求められます。では、厚さ20mm程度のレンガタイルではどうでしょうか。薄いタイルを両端だけで支え、中央に力を加えれば、タイルは曲がろうとします。その力が大きくなれば、割れてしまいます。しかし、裏面全体が十分な剛性のある下地に適切に支持されていれば、タイルが曲がることを抑えられます。つまり、薄いレンガタイルでは、タイルそのものの強度に加えて、下地で荷重を適切に受けることが重要なのです。これは、一般的な床用タイルと共通する考え方です。近年は大判で薄いタイルも使われています。薄いタイルは、運搬や施工時に慎重な取り扱いが必要ですが、適切な下地と施工によって床材として使用されています。レンガタイルについても、基本的な考え方は同じです。もちろん、製品の強度、荷重条件、下地の状態、施工方法などによって使用できる範囲は異なります。厚さ20mmだから必ず大丈夫、ということではありません。

写真は、自動車販売店での施工事例です。20mm厚のレンガタイルが床に使用され、その上に自動車が置かれています。この写真は、薄いレンガタイルでも、適切な条件のもとで車両が載る床に採用されていることを示す一例です。写真だけですべての荷重条件に対応できると証明するものではありませんが、レンガタイルの使い方を考える参考になると思います。
汚れについても、考えてみる。
床への使用について、もう一つ気になるのが「汚れ」ではないでしょうか。煉瓦には吸水性があります。そのため、室内の床に使うと、汚れが染み込むのではないかと心配される方もいらっしゃると思います。しかし、ここでも少し不思議に感じることがあります。煉瓦は、屋外の歩道や広場など、雨や土、砂にさらされる場所で使われている建材です。それが屋内の床となると、途端に「あれ、大丈夫だろうか」と不安になる。もちろん、屋外と屋内では汚れの種類も、清掃の条件も異なります。油や色の濃い液体が染み込めば、汚れが残る可能性もあります。また、表面に凹凸があれば、その部分に汚れがたまることも考えられます。
ただ、吸水性があることと、汚れやすいことは、必ずしも同じではありません。
汚れの付き方には、表面の状態、汚れの種類、使われる場所、清掃方法などが関係します。例えば、玄関や土間と、油を使うキッチンでは、求められる条件が違います。必要に応じて、汚れ対策や日常のお手入れについても考える必要があります。大切なのは、煉瓦だから汚れる、あるいは煉瓦だから汚れないと決めつけるのではなく、使う場所に合わせて考えることだと思います。
住宅のキッチンにも、レンガタイル。

写真は、アメリカの住宅でレンガタイルがキッチンの床に採用された事例です。日本では室内で靴を脱ぐことが一般的ですが、アメリカでは靴を履いたまま室内で生活する家庭も多くあります。つまり、住宅の床であっても、屋外と同じように靴で歩くことを想定した空間なのです。そう考えると、屋外の舗装にも使われる煉瓦が、住宅の床に使われることは、それほど不思議なことではありません。もちろん、薄いレンガタイルを床に使う場合には、下地や施工方法を適切に選ぶ必要があります。しかし、必要な支持が得られるように施工すれば、レンガタイルも床材として使用できます。写真では、赤いレンガタイルが木製のキッチン家具とよく調和しています。日本では「煉瓦は屋外に使うもの」という印象が強いかもしれません。けれども、海外の住宅を見ると、煉瓦を室内の床材として考えることも、自然な選択肢の一つなのだと感じます。
屋内と屋外の間にある「土間」。
日本には、屋内と屋外をつなぐ「土間」という空間があります。玄関から続く土間。庭とつながる土間。趣味の道具を置いたり、靴のまま出入りしたりする場所。屋内か屋外かをはっきり分けるのではなく、その中間にある空間です。レンガタイルは、こうした場所にもよく合うのではないでしょうか。アメリカなどでは、屋内でも靴を履いて生活する家庭があり、住宅の床に煉瓦が使われることもあります。生活習慣が違えば、建材の使い方も変わります。日本でも、住宅のすべての床をレンガタイルにする必要はありません。玄関や土間、キッチンの一部など、場所を選んで取り入れるだけでも、空間の雰囲気は変わると思います。
目地によっても、表情が変わる。
最後に、レンガタイルの目地についてもご紹介します。

写真は、赤系レンガタイルを使用した床です。煉瓦の表面には、焼き物ならではの色むらや質感があります。ここで注目していただきたいのが、目地の仕上げです。煉瓦の表面にもモルタルをなじませるような塗り目地にすると、煉瓦と目地が一体となった、柔らかな雰囲気をつくることができます。一方、煉瓦の表面をできるだけ汚さず、一枚一枚の表情をはっきり見せたい場合には、目地部分にモルタルを納める一本目地という考え方もあります。どちらが正しいというものではありません。目地の色や仕上げ方によって、同じレンガタイルでも印象が大きく変わります。なお、目地の仕上げ方は見た目だけでなく、清掃性や施工条件も含めて検討することが大切です。
馴染みがないことと、使えないことは違う。

レンガタイルは、外壁だけの建材ではありません。屋外だけの建材でもありません。住宅のキッチンや土間、自動車販売店の床など、さまざまな場所で使用された実績があります。もちろん、採用にあたっては、製品の強度や施工方法、汚れへの配慮など、確認しなければならないことがあります。私たちは煉瓦メーカーです。施工についてのすべてを説明できるわけではありませんが、製品の特徴や強度、これまでの施工実績については、できる限りお伝えしたいと考えています。ただ「大丈夫です」とお答えするのではなく、なぜ使えるのか、どのような点に注意すればよいのか。その理由を知っていただくことが、安心につながると思うからです。
馴染みがないことと、使えないことは違います。
今回のコラムが、レンガタイルの新しい使い方を考える、ちょっとしたきっかけになればうれしいです。





