OKADA BRICK 岡田煉瓦製造所

Column

コラム

「謹製」という言葉に込めて

受け継がれる、
 ものづくりの姿勢

2026.08.20

街を公園にする。レンガベンチという小さな提案

― 「歩きたくなる街」に、休める場所を ―

コロナ禍の頃、「まちなかウォーカブル推進事業」という言葉を知りました。少し行政的で難しそうな言葉ですが、私なりに理解すると、

「車中心の街から、人が歩きたくなる街へ」

という考え方です。当時、この考え方にとても共感したことを覚えています。高齢化が進み、健康を意識して歩く方も増えています。ただ目的地へ移動するだけではなく、

「少し歩いてみよう」
「この道を通ってみよう」
「ここで少し休んでいこう」

と思える街になれば、まちなかそのものが公園のような場所になるのではないか。そんなことを考えました。

街を「公園化」する

公園が心地よいのは、緑があるからだけではありません。歩く場所があり、座る場所があり、人と話す場所がある。目的がなくても、そこに居られる場所があります。それを公園の中だけではなく、駅前や商店街、歩道、広場など、普段の街の中にもつくれないだろうか。私はそれを、「街を公園化する」というイメージで考えています。もちろん、街に木や花を増やすことは、とても魅力的です。ただ、緑を増やせば、剪定や水やり、落ち葉の清掃など、維持管理も必要になります。そこで、もう一つ「自然を感じられるもの」として考えたのが、レンガです。

土からできたベンチを置く

レンガの原料は、天然の粘土です。土を成形し、高温で焼き締めてつくります。そのレンガを使って、街の中にベンチをつくる。木のような緑そのものではありませんが、土から生まれた素材が街の中に入ることで、コンクリートやアスファルトだけの空間とは少し違った、自然の温かみが生まれます。そしてレンガは、適切に施工すれば長い年月使うことができます。木製ベンチのように定期的な塗装を必要とせず、年月が経つことで周囲の景観になじんでいく。10年、20年と街に残りながら、少しずつその場所の風景になっていく。そんな使い方が、レンガには合っていると思います。

「歩く」ためには、「休める」ことも大切

ウォーカブルというと、どうしても「歩くこと」に目が向きます。でも、歩きやすい街を考えるなら、私は休める場所も同じくらい大切だと思います。高齢の方がお散歩をして、少し腰掛ける。買い物の途中に休憩する。子どもと一緒に座る。友人と立ち話をしていたら、そのままベンチに座って話し込む。そんな場所がまちなかに点々とあれば、

「もう少し歩いてみようかな」

と思えるかもしれません。ベンチは単に座るための設備ではなく、人が街にとどまるきっかけにもなります。

レンガベンチは、街のオブジェにもなる

広い駅前広場や歩道では、どうしても空間がのっぺりして見えることがあります。そこに、ある程度の大きさと重厚感を持ったレンガベンチを置く。すると、ただのベンチではなく、空間のアクセントになります。レンガには一つひとつ色幅があり、積み方によっても表情が変わります。座るための場所でありながら、街の風景をつくる小さな建築物、あるいはオブジェのような存在にもなる。そこがレンガベンチのおもしろいところです。

レンガ花壇をつくるなら、一部をベンチに

これからレンガ花壇を計画される方には、花壇の一部をレンガベンチとして使えるようにするのもおすすめです。すべてをベンチにする必要はありません。花壇の一辺だけ少し幅を持たせたり、途中に腰掛けられる場所をつくったりするだけでも、人が立ち止まれる場所になります。植栽の緑と、土から生まれたレンガ。そのそばに座って休める場所がある。それだけで、花壇が単なる植栽スペースではなく、人が集まり、休み、街を楽しむ場所に変わります。公園や駅前広場だけでなく、店舗前、マンション、学校、公共施設などでも取り入れやすい考え方だと思います。レンガ花壇をご検討の際は、

「一部をベンチにできないか」

という視点も加えてみてはいかがでしょうか。

タンブル加工で、少しやわらかな表情に

レンガベンチをつくる場合には、角を少し丸めたタンブル加工のレンガを使うのも一つの方法です。通常のレンガよりも角がやわらかくなり、少し使い込まれたようなアンティーク調の表情になります。人が腰掛ける場所だからこそ、見た目にも少しやさしい印象をつくることができます。また、周囲の舗装にもタンブル加工したアンティーク調のレンガを使えば、ベンチだけが浮くことなく、街全体に統一感のある味わい深い景観をつくることもできます。ただし、舗装については用途に合わせた検討が必要です。タンブル加工によってレンガの角が丸くなるため、通常品に比べて目地部分の凹凸が感じられやすくなります。特に公共空間では、歩きやすさや平坦性が重視され、通常の角のあるレンガが適する場合もあります。そのため、ベンチにはタンブル加工、舗装には通常品。あるいは、場所や用途に応じて使い分ける。そうした選び方をすると、使いやすさとレンガらしい表情の両方を生かせると思います。

あの頃考えたことを、もう一度

コロナ禍の中で「まちなかウォーカブル」という考え方を知り、岡田煉瓦でも一度、レンガを使った街づくりの提案をまとめました。時間が経った今、改めて考えてみても、

「街を公園のようにする」

という考え方は、これからますます大切になるように感じます。歩きたくなる。休みたくなる。人と話したくなる。少し長く、その場所にいたくなる。そんな街をつくるために、必ずしも大きな施設が必要なわけではありません。一本の木でもいい。小さな花壇でもいい。そして、そこに一つのレンガベンチがあってもいい。土から生まれたレンガが、街の中で人を迎え、誰かが腰掛け、また次の人へ使い継がれていく。レンガで街をつくるというのは、建物をつくることだけではない。そんな小さな提案を、これからも考えていきたいと思います。

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