先日、協力会社の肥後屋商店さんと群馬県の施工現場を見学してきました。最高級の黒煉瓦を使用した「中空積み工法」の新築建物です。近年は舗装やタイル用途が中心となり、構造的に積み上げる“レンガ積み”の建物はほとんど見かけなくなりました。だからこそ、この現場をぜひ自分の目で見たいと思いました。
同行したのは、長年レンガ設計に携わってきた80歳の大先輩。帰り際に手渡してくださったのが「煉瓦再考 ― 煉瓦は景観材料にすぎないのか ―」という資料でした。明治期、煉瓦は官庁舎や工場などを支える近代建築の主役でした。しかし濃尾地震や関東大震災をきっかけに「地震に弱い」と評価され、日本の建築は鉄筋コンクリートへ移行。煉瓦は構造材から景観材へと役割を縮小していきます。けれども問題は材料ではなく、工法や技術の継承不足ではなかったか。ヨーロッパでは今も煉瓦建築が現役で使われ、耐久性や補修性、そして「経年美化」という特性が見直されています。直しながら長く使える、まさにこれからの時代に合った素材です。
今回見た黒煉瓦の建物は、その価値を静かに物語っていました。積み上げられた煉瓦が構造となり、重厚で温かみのある風景をつくっている。やはり煉瓦は単なる仕上げ材ではなく、建築そのものだと感じました。岡田煉瓦製造所は、煉瓦を未来へ残すメーカーとして、この「積む文化」をこれからも伝えていきたい。煉瓦は景観材料にすぎないのか――私は、そうは思いません。煉瓦は、街の記憶をつくる素材なのです。